アパレル業界における経済産業省の動向
アパレルアイの福永浩士です。
アパレル業界は、いわゆる“お上”と無縁だと考えていましたが、どうやらそうではないようです。
許認可を求めたり監督されているわけではありませんが、経済産業省が今どう見ているか、どう動いているかを知ることで、自身の業界のことが少しわかります。今日はそのあたりを解説します。
目次
- 現在のアパレルの市場環境
- 原因解消に向けての取組
- 今後のアパレル業界をこう見ている
- まとめ
現在のアパレルの市場環境
日本はかつて繊維産業が国家としての主力産業だった時期があります。そういう時代を経てバブル期の1990年には衣料品市場規模が15兆円になりました。それから20年後の2010年には市場規模は10兆円まで低下、現在は10兆円を下回っています。
市場規模は小さくなりましたが、取扱点数は20年間で20億点から40億点に倍増しており、国内での供給単価が下がっております。
また、家計調査において衣料品購入単価は6割までしか下がってないので市場に供給されたものの、消費されていないものが相当数あるということ(供給過多)を示しています。
アパレル企業は大小関わらず在庫を抱えており、在庫をお金に変えるために安売りをする、モノの価値が下がる、さらに売れなくなるという悪循環にあります。加えてモノがあふれている時代ですので衣料品の買い替え需要もそこまで大きくない、ということもあります。
また、携帯電話をはじめとする「通信費」が家計の中で増え、購買力が低下し、衣・食・住の衣が真っ先にそのあおりを受けるという現状があります。その❝通信“を利用した、インターネットでの取引市場(EC市場)が2020年には2.6兆円になる見込みです。
原因解消に向けての取組
日本におけるアパレル産業の不振の原因はいろいろあると思いますが、経済産業省はその中でも「商慣習」と「サプライチェーンの脆弱化」にあるとみています。
アパレル産業は、他の業界にみられないような支払サイトの長い手形、歩引き・歩積み、未引取など非合理的な古い慣習が残っています。それが全体の体力を奪っているとみられています。
また、委託販売方式が過剰在庫を生じさせやすく、在庫処分のため、シーズン真っ最中であるにもかかわらずセールを実施して利益が取れなくなるなど、サプライチェーン全体の競争力の減退を生んでいるとも指摘しています。
加えて、アパレル産業は多くが労働集約型の産業でもあるため、IT導入・活用による改善が必要とも訴えています。
そうした中で、経済産業省は一部の企業に聞き取り調査を現在実施しているようです。
今後のアパレル業界をこう見ている
経済産業省は国内のアパレル需要については伸びないとみています。
少子高齢化が進んでいますので、乳幼児の衣料品市場は厳しくなる一方で、高齢者向けの市場はいましばらくはカーブは緩いままかもしれませんが、全体で押しなべて考えると、需要は頭打ちというのは理解できます。
一方で、海外には活路はあるとも言っています。海外からの日本人気は高く、綿密にマーケティングを実施すればチャンスはあるとみられています。
まとめ
経済産業省がまとめたレポートには「2020年を目途に、この数年をラストチャンスとして…」と記載してあります。
国はアパレル業界がかなり深刻な状況であるとみているようです。
経済産業省はただレポートをまとめただけでなく、様々な支援策を打ち出しております。
より強固なサプライチェーンを構築すべく「J∞QUALITY」の推進(2/16ブログ参照)をしておりますし、ITや設備の導入に対しても補助金等の支援策をうっております。
今回のレポート作成にあたり、経済産業省は各界の有識者の意見をたくさん聞かれたようです。
特に業界の方はこのレポートをご覧頂き、参考にしていただければと思います。
アパレル・サプライチェーン研究会報告書 / 経済産業省 製造産業局
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/report_001.html
福永 浩士
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